JALとANA、「台湾表記」問題で見せた強い意地 中国・台湾双方に配慮、試行錯誤を繰り返した
世界中の航空会社が台湾の扱いをめぐって困惑した。今年4月、中国の航空行政を管轄する中国民用航空局(民航局)は、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)を含む航空会社44社に対し、台湾を中国の一部とする「一つの中国」原則に反する表記を正すよう通達した。
具体的には、各社の予約サイト上にある「台湾」の表記を「中国台湾」などと表記することを求めたとみられている。民航局は航空各社に対し、7月25日までに表記変更を行わなければ、中国市場へのアクセスを規制するなどと揺さぶりをかけた。
航空会社全44社が表記変更に応じた
同局は7月26日、通達を出した44の航空会社すべてが表記変更に応じ、うち40社がすでに変更を完了したと発表。残るアメリカン、デルタ、ユナイテッド、ハワイアンの米航空4社も変更作業中だとした。
通達があった4月25日以降、大半の航空会社は中国の求めに応じ、「台湾(Taiwan)」から「中国台湾(Taiwan, China)」へと、台湾を中国の一部と明確に示す表記に変更していた。
米ホワイトハウスは5月5日に声明を出し、中国当局の通達を、国家が監視する社会の恐ろしさを描いた「(ジョージ・)オーウェル作品のようなばかげたもの」と批判。米航空各社に中国の要求に従わないよう求めた。企業側は「アメリカ政府の動きに合わせて対応する」として態度を保留していた。
7月25日の期日が迫った段階で、米各社は台湾の都市に限り、「台北(Taipei)」や「高雄(Kaohsiung)」など、「台湾(Taiwan)」を外して都市名のみを表記する方式に変更した。結果として限定的だが表記変更に動いた。アメリカン航空の広報担当者は、「航空輸送はグローバルビジネスであり、事業を展開している各国の規定に従うしかない」と説明している。
その一方でJALとANAは、中国、韓国、台湾を「東アジア」という地域でひとくくりにし、その中で都市名のみを表記する方式を採用した。実は、JALとANAの日系2社が取った「台湾」表記問題への対応は、海外の他社とは異質なものだった。表記方法について、最後まで試行錯誤を繰り返したのである。
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